おー! ウンコ!!

うちには介護レベル4になる、ばあちゃんが住んでいる。
食事はもちろん、移動もトイレも一人じゃあ
なにひとつ出来ないのだ。

毎朝ばあちゃんにトイレさせるのは、父と母の日課。
猫巻と弟が、それをサポートする。

なにしろ、ばあちゃんは60kg超もある、おでぶばあちゃんなのだ。


トイレは狭い。二人はいると、もういっぱい。
ばあちゃんをトイレまで運ぶ猫巻と弟。
後ろから腋の下に、ぐいっと腕をとおし、ガーーーっと入り口まで運ぶ。
そこからは親父とおふくろにバトンタッチ。
夜中に溜まったオムツを、新しいものに履き替えさせる。



いつもはそれでおしまいなのだが、その日は違った。



履き替えそうとオムツを外した瞬間に、あたたかい感触。
ばあちゃんがウンコを漏らしてきたのだ。衝撃のウンコ垂れ流し。


とつぜんのことに親父が叫んだ


  「おー! ウンコ!!」


ショックなことはわかっているが、
親父の身に何が起きているか気づいているのだが、
 みんなゲラゲラ笑い出す。

猫巻も弟も、オムツを手に取るおふくろも
しまいには、ばあちゃんまでニヤニヤ笑い出した。

おー! ウンコ!




おかしいことなど何もないのだろうけれど、ときどきコトバは魔力をもつ。


考えてみると、私たちの周りはウンコばっかりだ。


 予定のない休日に、
  「おー!ウンコ!」

 期待はずれのランチメニューに、
  「おー!ウンコ!」

 今日中に仕上げろという上司の命令に、
  「おー!ウンコ!」 

 話を合わせないと仲間はずれにされる関係に、
  「おー!ウンコ!」

 彼氏との予定があるからという友達のメールに、
  「おー!ウンコ!」

 うまくいかなかった昨日に、
  「おー!ウンコ!」



子供たちは頭がいいから知っている。
つまらないとき「ウンコ!」「チンコ!」と叫べば、笑いとばせるってことを。


めんどうくさくて、やりきれないことを切り抜けるコトバ。

くそったれな毎日よ、 おー! ウンコ!!